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最新の画像技術の利用

高度防犯システムの構築に向けて〜最新の画像技術の利用〜 (抜粋)

 最近の画像技術の進歩にはめざましいものがあります。監視カメラの画像はデジタル化などにより鮮明になっただけでなく、「顔を認識し個人を特定できる」、「不審物を検知し警報を発することができる」など、コンピュータにより画像の意味を認識する技術が進みました。
 これらの技術はテロ対策の重要な要素になるとして、国が後押していることもあり今後さらに進化することでしょう。  
 この進化する画像技術を駆使することによって、高度な防犯システムの構築が可能となることが大いに期待されます。
 この論文では、防犯分野において利用されるパターン認識技術のうち、現在実用若しくは実用に近い「Nシステム」、「顔認証」、「不審物検知」、「侵入者検知」、「歩容認証」の5システムについて、進歩の経過や最新の技術を写真を使って判り易く解説するとともに、その技術を応用した高度防犯システムの構築の可能性について述べています。

パターン認識                            
 数年前の新聞記事に「日本の空港でも、入国の際に指紋と顔を記録することがアメリカに次いで決まった。」という報道がありました。              
 この指紋や顔画像を読み取ることを、画像認識技術といい、一般には「パターン認識」と呼ばれる技術領域です。これはカメラで撮影した画像を、コンピュータで画像処理を行ってその意味を認識する、いわば人間の目と頭脳の役割を果す技術と言えます。                         
 既に40年前には、「郵便番号自動読み取りシステム」と呼ばれる葉書や封書の郵便番号を自動的に読取って分別するシステムが開発され、郵便局で実用に供されています。

Nシステム
 走行する自動車のナンバーを読取る「自動車ナンバー自動読み取りシステム」通称「Nシステム」が20年前に開発され、実用化されました。
 Nシステムは、自動車の前面の画像の中から先ずナンバープレート部分のみを抽出し、車両の陸自コード、車種コードなどの文字や数字を読み取り、辞書データと照合しナンバーを正確に読取るものです。 
 この20年でカメラ技術が進歩したことや、画像処理技術が進歩したことにより、今では普通のビデオカメラとパソコンを使って比較的簡単にナンバーを読み取ることが可能になってきました。価格は20年前に比べ20分の1以下まで下がっているという試算もあります。

 写真1、2は市販のビデオカメラで手持ちで撮影した車両前面の画像と、その画像をパソコンでリアルタイム処理をしてナンバープレートを抽出した画像(下段)と抽出したナンバープレートを辞書データと照合し読み取った画像(上段)の例です。写真1は昼間に撮影、写真2は夜間に撮影した例でいずれも照明は使用していません。

(写真1、2は株式会社レッツ・コーポレーション提供)

 Nシステムの応用例として、高速道路の不正通行防止があります。これは料金所の入り口でナンバーを読み取り通行券にナンバーの下二桁を記載することにより、遠距離の車両同士が通行券を途中で交換することを防ぎ、通行料金を不正に安くできなくするものです。この損害額は、年間数億円に及ぶという試算があります。その他劇的にコストが下がったことにより、駐車場の出入口でナンバーを読み取り各種サービス向上に役立てるなど身近に利用が拡大しています。
           
顔認証                                 
 顔認証は、@画像の中から顔を検出し、A目、鼻、口などの特徴点を抽出した後、Bあらかじめ登録した顔の特徴点データと照合する、の3ステップで人物を特定するものです。
 我国でも20年ほど前から研究機関やメーカなどで研究を進めてきましたが、最近ほぼ実用領域に入ったとされます。
 照合の方式には目・口などのエッジの特徴点を抽出し照合する方式や顔全体の明暗のパターンを抽出し照合する方式など代表的なものに3種類の方式があります。それぞれの方式には特長があり研究機関やメーカが研究開発を競っています。
 顔認証の研究機関の代表的な研究者によれば、我国の顔認証技術の客観的な評価の結果は世界最高水準にあるとのことです。
 顔認証技術は、国のテロ対策に資することは勿論のこと、万引きのような再犯者が犯す犯罪対策にも十分利用できると考えます。
 一方、この顔認証は、個人の特定のみならず性別、年齢の推定も可能で、例えばスーパーやコンビニなどで季節別、時間帯別の来店者数の計測も簡単にできるので、マーケティングへの応用が可能です。

不審物検知                           
 「Nシステム」や「顔認証」などの認証技術とは別に、画像の前後の差分を検出して背景と変化した人、物などを区別することにより置き引き、置き去りなどを検知する技術があります。この技術は主としてテロや盗難対策に使うことで進歩してきた技術です。
 写真3は、置き去り検知システムの例で、設定したエリア、ここでは地下鉄の駅のホームに一定時間放置された物体(赤いエリア内にあるスーツケース)があった場合に警報を発するシステムで、爆発物などの危険物を探知することができます。
 この逆に今まであった物体が持ち去られたという置き引きを検知した場合にも警報を発することができ、盗難対策にも利用できます。                  

侵入者検知システム                     
 不審物検知技術の領域の応用でさらに高度な技術としては、侵入者を自動的に検知する侵入者検知システムがあります。
 写真4は、フェンスに沿って監視エリア(写真の赤いライン)を画面上で設定した例で、このラインを超えた場合警報を発するシステムです。カメラだけで検知することができるため設定変更も簡便でコストも比較的低廉です。
 写真5は、画像の中に侵入する複数の人物(写真では駐輪場の赤いエリア以外に入った2人)を検知して警報を発することができる侵入者検知システムの例です。
 このシステムでは、指定されたエリアに侵入する人物の大きさ(身長)や、侵入方向、速度を設定できることから、侵入者のみを確実に識別することが可能です。
 さらに、この技術の応用で軍用技術から生まれた侵入者を追跡するシステムがあります。
 写真6は、監視エリアの中の侵入者を検知すると、対象者(黄色四角に囲まれた人物)の動きに従ってカメラが自動的にズームアップして追尾する例で、対象者の顔が大きく写っています。 (写真3、4、5、6は、株式会社セキュア提供)  

歩容認証
 歩容認証は、画像に写った人物の歩行の様子から個人を特定する技術で、先に説明した4システムに比較して未だ研究段階にあり、実用まで若干の時間を要すると考えられます。
 ただ、雨降りなどの傘の中の顔の見えない人物特定や、離れた位置での人物特定など顔認証が利用できないシ−ンで必須の技術として注目されます。
 この歩容認証について、捜査のベテランと話したところ、捜査員は歩き方を注視することにより雨天でも遠方からでも人物を特定することは可能とのことでした。
 顔認証、歩容認証は、捜査員達が大変な努力と経験を通じて取得した面割り技術を、画像処理技術を利用して普遍化、自動化するものと言えます。

高度防犯システムの構築                            
 犯罪を防止する施策は、社会学、犯罪心理学、工学分野を含め極めて広範囲におよびます。欧米では、主として防犯の観点から理論的研究が進められ、建物や街路の物理的環境の設計により犯罪を予防しようとする「防犯環境設計理論」、犯罪の機会を与えないことにより犯罪を未然に防止しようとする「犯罪機会論」、小さな犯罪を見逃さないことにより大きな犯罪に発展させないとする「割れ窓理論」などとして発表されています。
 防犯対策は、いくら高度な防犯システムを構築したとしてもシステムだけでは解決できないことは言うまでもありませんが、画像処理技術を駆使した高度なシステムを構築することにより犯罪の機会を減少させ、犯罪を未然に防止させることは可能です。
 ただ犯罪は極めて多様性があり、全ての犯罪に有効な特効薬はありませんので、それぞれの犯罪に着目し対策を講ずる必要があります。

◎例えば住宅、事務所、工場などに侵入し盗みを働く侵入犯罪に対しては、守るべき対象は金品、情報あるいは人命か、また守るべき時間帯は有人か無人かなどを明確にしてシステムを構築する必要があります。
 これらの侵入犯罪に対しては、検知エリアや侵入エリアを設定できる「侵入者検知システム」が昼夜間を通して有効ですが、加えて「顔認証システム」を活用すれば工場などのように出入りする人数が多い場合、それが登録した人間かどうかの識別も可能になり、警備員の警備の補助として役に立ちます。
また、車両が多く出入りする工場などには「Nシステム」により事前に登録した車両か否かが入り口で判別できるほか、出入りする全ての車両を記録できるので工場の安全対策には有効です。

◎一方万引き犯罪は、セルフ販売業界で毎年2,000億円を超える被害があるとされ、経済的損失が大きいばかりではなく、検挙される人員も多いうえに再犯性が高く犯罪の道に迷いこむ入口になることなどから、万引きを防止することは犯罪対策上重要です。しかし、現状のハード・ソフトの対策は課題も多く効果的な対策が望まれています。
 そこで、例えば万引き犯に再犯が多いことに着目して、登録した万引き犯が来店した際に店員に注意を喚起する「顔認証システム」を組み込んだシステムを開発し活用することにより、犯罪機会をなくし未然防止を図ることが可能となると考えます。

◎捜査の専門家に限らず、一般人でも人間の夜間の怪しい行動やスーパーの店内での怪しい行動をキャッチすることができます。この不審行動をキャッチする人間の感覚の研究をさらに推進することにより、不審行動パターンに合致した場合に警報を発することができる未来型防犯システムが開発されることを期待しています。


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