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実践セキュリティ論 最新のセキュリティ技術

2012年6月に電気通信大学大学院で実施した講義の概要

1、 近年の犯罪傾向
 最近の犯罪傾向について、警察の統計などを使って分析する。
 キーワード 「平成以降は犯罪件数が激増」、「体感治安の悪化」、「新型犯罪」

 昭和21年以降の年度別犯罪件数のデータを見ると、戦後の一時期増加したこともあるが、昭和期は概ね100万件〜150万件で推移していた。ところが、平成に入るとその数が際立って増加傾向を示し200万件を突破、一方で検挙率は減少の一途をたどり、昭和期は概ね60%程度であったものが平成14年には20%を切った。現在は30%程度にまで回復してはいるものの、かっては、犯罪を犯した者は必ず逮捕され、犯罪はリスクの多い行為であったものが、残念ながら現在ではリスクが小さい、すなわち犯罪者にとって都合のいい状態が続いていると言える。
 最近では秋葉原事件のような無差別殺傷事件のように、何の関係もない人を巻き込んで殺害する事件が増えてきており、国民の体感治安の悪化につながっている。このほか外国人犯罪、街頭犯罪、侵入窃盗が増加しているほか、新手の犯罪として、振り込め詐欺やサイバー犯罪などの新型犯罪も増加している。

2、警備業
 我国警備業の歴史、現状、法律的な位置づけについて解説する。
 キーワード 「成長続ける警備業」、「9千社」、「従事者数50万人」

 我国の警備業の規模は、現在企業数9千社、従事者数50万人で、売上は3兆6千億円に上る。
 日本における警備業の元祖は昭和39年に誕生した日本警備保障現在のセコムで、翌年には綜合警備保障現在のALSOKが設立された。
 警備業が警備業法として法律によって認定されたのは昭和47年で、業界自体の歴史は浅い。警備業とは、施設の入り口に立つガードマンに代表される施設警備(機械による警備も含む)、雑踏などでスムーズな車両や人の誘導を行う交通誘導・雑踏警備、金品などの貴重品を運ぶ輸送警備、要人の身辺を守る身辺警備の4種類がある。市場規模は年々増加の傾向を示しており、過去10年間年平均5%の成長を遂げている。

3、監視システムの最新技術
 防犯について理論的な解説とその理論を実践する警備システムについて解説する。
 キーワード 「防犯環境設計=CPTED」、「遠隔画像監視」、「警備ロボット」、「情報警備事業」
 
 防犯の基本は、安全な環境を作ることである。防犯環境設計は、欧米で1970年代から唱えられた理論で、建物や街路等のハードの設計や住民による防犯活動などのソフトの対策により犯罪の機会を減らすとの考え方である。
 防犯環境設計の考え方に基づいて、警備会社が最も力を入れているのが泥棒から事務所や家庭を守る機械警備である。機械警備は侵入者を検知するセンサーの良否が重要であり、警備会社はそのためセンシング技術の開発にしのぎを削っており、従来のセンサーのほか、画像を遠隔で監視するシステムやガードロボットなどの開発を進めている。
 また、近年情報漏洩対策に注目が集まっていることから、警備会社においてもPCやネットワーク監視等の情報警備事業も始まっている。 

4、防犯カメラ
 防犯カメラの利用の実際を、英国の例を含めて解説する。
 キーワード 「増加する防犯カメラ市場規模」、「設置台数420万台=イギリスの防犯カメラ」、「街頭防犯カメラシステム」

 最近では、コンビニや金融機関にはもれなく防犯カメラが設置されており、その市場規模は増加の一途をたどっている。カメラそのものの国内での販売台数は、年間80万台に達している。
 一方、監視カメラ先進国といわれている英国では90年代初頭からテロ事件が頻発したことが要因であるが、実に公道に監視カメラが420万台も設置されている。特に、危険な地区として知られているニューハム地区には公共空間だけで250台が設置されており、その結果犯罪件数が全体で2割の減少が見られたという。
 日本では、防犯カメラの設置数の正確な統計はないが、警察が10都道府県に300台ほどの街頭防犯カメラを設置、運用している。

5、最新の画像技術
 防犯カメラを使った最新の画像技術について、その技術の解説と実際に利用シーンを解説する。
 キーワード 「進化する画像処理技術」、「放置物検知」、「顔認証」、「画像解析システム」、「Nシステム」、「ATM防犯システム」

 近年の監視カメラの画像処理の進化は著しく、軍用に開発された技術を民間転用されたものも多い。例えばイスラエルの会社が開発した侵入者検知技術や、放置物検知システムなど既に実用になっているものもある。
 顔認証システムはここ数年特に進歩してきたが、性能面からみても実用領域にあると言える。顔認証については、日本のメーカの性能は世界で最も優れていることが確認されている。
 さらに、人間の動きそのものを追跡・解析し警報を発する画像解析システムについては、警備業で使われ始めているが、それ以外にも例えば交通量計測など交通管理などにも応用が可能と考えられる。
 自動車ナンバーを自動的に読み取るいわゆるNシステムは、30年程前に開発されたが、近年その性能は著しく進歩し、しかもコストも開発時の20〜30分の一程度まで下がった。その結果、駐車場などにもその利用範囲が広がった。
 その他、画像処理技術を利用したシステムには、ATM防犯システムやエレベータ内の暴れを検知するシステムなどが実用に供されつつある。
 
6、万引き犯検知
 万引き犯罪の現状と行動分析を行い、その上で最新の画像処理技術を活用して、近い将来万引き犯を自動で検知することが可能かどうかの研究成果を説明する。
 キーワード 「再犯性高い」、「初発型犯罪」、「万引き犯の行動分析」、「万引き検出システム」

 私は平成18年から3年間、大学院の社会人博士コースに在学し、「最新の画像処理技術を活用して人間の不審行動を分析することにより、犯罪の未然防止を図ることができないか」の研究を進めたが、全ての犯罪に共通する解を見つけることは困難であることから、万引きに的を絞って研究を進め博士号を取得した。
 万引きは、「よろず引く(盗む)」あるいは「まびく」がなまったと言われているおり、重大な犯罪にもかかわらず語感が窃盗、泥棒に比べ軽い。万引きは再犯性の高いことや次なる犯罪に手を染めるいわば犯罪の入り口である初発型犯罪であることが特徴で、経済的損失も3千億円に達する。
 万引き犯の行動分析を行って、その行動パターンから不審行動を自動検知できることが望まれるが、その前段としてカメラあるいは赤外線センサーを用いて例えばコンビニ、スーパーなどの商店内で人物の追跡実験を行った。実験の結果、カメラを用いる場合や赤外線センサーを用いる場合の何れでも、リアルタイムで取得するにはさらに研究を要するものの、人物位置を取得することは可能であることが分かった。
 当面の利用としては、実験で確認した人物位置取得システムを利用して万引きが発生した場合、万引き事案を検索する「万引き検出システム」として十分実用できると考えられる。


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